2000年代に入ってから、世界的にエコカーブームが起きていますよね。トヨタのプリウスを筆頭に、ハイブリッドカーが各メーカーから発表されています。燃費が良くて経済的なことから、すごく人気が高まっているわけです。
そして、そこから発展して、電気自動車も注目されています。モーターだけで駆動する電気自動車やハイブリッドに充電機能を備えたプラグインハイブリッド、発電エンジンを搭載したシリーズ方式のハイブリッドなどがありますね。
従来のハイブリッドカーよりも燃費性能に優れていますから、少しずつ販売台数を伸ばしているようです。
でも、まだまだ一般的なクルマではなので、迷っている人も多いでしょう。ここでは、電気自動車のメリットとデメリットについて解説していきます。
目次
電気自動車の仕組みとは?
電気自動車とは、その名の通り電気で走る車のことです。バッテリーに蓄えた電気により、モーターを駆動して走行します。ガソリンの代わりに電気を使いますから、排気ガスや二酸化炭素を排出しません。
仕組みとしてはすごく単純で、電気を蓄えるバッテリー(リチウムイオン電池)とタイヤを回転させるモーター、モーター出力をコントロールする制御装置から成り立っています。
基本的にはこれだけですから、ガソリン車のようにエンジンや燃料タンク、セルモーターやラジエーターなどの部品が必要ありません。エンジンを構成する部品は1~3万点なのにたいし、モーターの部品は30~40点しかないわけです。
非常にシンプルな構造のため、故障時にも修理しやすいというメリットがあります。
ハイブリッドカーとの違いについて
ハイブリッドカーにもモーターが搭載されていますが、基本的にはエンジンで走行し、走行中に発電した電気でモーターも駆動しています。モーター単体では走行することができずに、あくまでもエンジンのサポート的な役割となっていますね。
さらに、ハイブリッドカーの発展型として、充電機能を備えたプラグインハイブリッドもあります。プリウスPHVやアウトランダーPHEVなどがそうで、家庭用電源からケーブルを差し込んで充電が可能です。
モーター走行とハイブリッド走行を使い分けることができるので、通常のハイブリッドよりも飛躍的に燃費性能が高まりました。
一般的に、電気自動車とプラグインハイブリッドを合わせて、「電気自動車」と呼ばれることが多いですね。
電気自動車の最大のメリットは経済性
電気自動車の最大のメリットは、経済性の高さだと思います。実際に所有している人も、燃料代の安さに惹かれて購入したはずです。
ガソリン車と比較すると、同じ距離を走るのに使う燃料代は半分以下で済むと言われています。電気代の安い深夜に充電すれば、さらにお得になりますね。
たとえば、日産のリーフの場合、30kWhバッテリー搭載車で280kmの航続距離があります。30kWhをフル充電すると約740円ですから、1kmあたり2.6円で走行できることになりますね。
一方、ガソリン車であるホンダのフィットだと、カタログ燃費で21.8km/Lですから、ガソリン130円で計算すると1kmあたり5.9円となり、2倍以上の開きがあるわけです。フィットは低燃費車ですから、他の車だともっと差が出てくるでしょう。
ハイブリッドカーと比較しても、明らかに燃料代は安いです。トヨタのプリウスで計算すると、カタログ燃費で40.8km/Lですから、ガソリン130円とすれば1kmあたり3.1円になります。
1km当たりの燃料費 | |
---|---|
リーフ(電気自動車) | 2.6円 |
プリウス(ハイブリッド車) | 3.1円 |
フィット(ガソリン車) | 5.9円 |
他にもたくさんのメリットがありますから、順番に見ていきましょう。
環境にやさしい
排気ガスを排出しないので、環境性能に優れています。地球温暖化の原因となるCO2も出ませんし、火力発電の電力を使ったとしてもガソリン車よりも1/4程度の排出で済むわけです。
こういった理由から、国も電気自動車の普及に力を入れていて、「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金」を支給して購入の後押しをしています。
さらに、自治体からの補助金やエコカー減税などにより、かなりお得に購入できる状況になっていますね。
走行性能が高い
モーターはトルクが太いので、強力な加速性能があります。停止時からでもスムーズに加速することができますから、ガソリン車よりも走行性能が高いといえますね。アクセルを強く踏み込むと、体がシートに押さえつけられるほどです。
たとえば、日産リーフの最高出力は1,500ccのガソリン車と同等ですが、加速力に関しては3,000ccのセダンに匹敵するほどのパワーがあります。最高速も140km/hほど出ると言われていますから、不満を感じることは無いでしょう。
さらに、モーターは振動が少なくて静かなので、走行中のノイズもほとんど発生しません。なので、高級セダンのような快適な乗り心地となっています。
消耗品がの交換が少ない
ガソリン車だと、オイルやフィルター、エアクリーナーエレメントなどを定期的に交換しないといけません。走行距離が多くなると、プラグコードやタイミングベルト、Vベルトなどの交換も必要です。
電気自動車の場合は、そういったものはありません。定期的にやることといえば、タイヤ交換くらいでしょう。バッテリーも消耗品ですが、10万km保証などが付いているので気にする必要はないと思います。
定期的なメンテナンスが少ないために、面倒臭がり屋な人にとっては良いでしょう。
電気自動車は維持費も安い
電気自動車を購入するにあたって、最も気になるのが年間の維持費についてですよね。ガソリン車よりも安いと言われていますが、実際にどれくらいの金額なのかを解説していきます。
維持費について考えるべきなのが、「燃料代」と「税金」についてです。
燃料代は電気代ということになりますが、日産リーフの30kWhバッテリーを満タンにすると約740円の電気代が掛かります。航続距離は280kmですから、年間1万キロ走行すれば約26,000円の電気代という計算になりますね。
ただし、これは自宅で充電できる人の場合です。外部の充電スポットを使用する場合だと、メーカーが用意する充電サービスに加入しなくてはいけません。日産のスタンダードプランだと月額3,240円なので、年間で38,880円となります。
次に、税金に関してはエコカー減税が適用されるので、自動車取得税と重量税の初回が免除、2年目の自動車税の減額されます。他にも、「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金」を、30万円ほど受け取ることができますね。
たとえば、日産リーフを例に出すと、50万円近くも節約できることになります。
ガソリン車と比較しても、維持費に関しては電気自動車の方が安いといえますね。燃料代による差が大きいので、年間の走行距離が多いほどお得感も増していくでしょう。
バッテリーの寿命に関して
電気自動車の中で、コストの大部分を占めるのがバッテリーです。バッテリーは時間とともに劣化するので、消耗品ということになります。つまり、バッテリーの寿命が来ると、交換する必要があるということですね。
ちなみに、日産リーフのバッテリー交換費用は、60万円となっています。かなり大きな金額ですから、どれくらいで寿命になるのかが気になるところでしょう。
一般的に、容量が既定の70%を下回った場合に、バッテリーの寿命だとされています。満タンに充電したのに航続距離が70%以下になったとしたら、バッテリーの交換時期だと思って間違いありません。
ただ、メーカーでは最長で8年の保証を用意しているので、不具合が出たとしても無償で交換してもらえることが多いです。
メーカー | 条件 | 保証内容 |
---|---|---|
三菱 | 初年度登録後8年以内 走行16万km以内 |
バッテリー容量の70%を下回った場合、 無償で修理・交換を実施 |
日産 | 【30kWhバッテリー】 初年度登録後8年以内 走行16万km以内 |
容量計が9セグメントを割り込んだ場合に、 修理や部品交換を行い9セグメント以上へ復帰 |
【24kWhバッテリー】 初年度登録後5年以内 走行10万km以内 |
基本的には、「初年度登録後8年以内」か「走行16万km以内」のどちらか早い方で、容量が低下した時に対応してもらえるようです。これを過ぎてしまった場合は、自費で交換しなくてはいけません。
ただ、十分すぎるほどの保証期間ですし、大抵の人はこれより前に新しいクルマに乗り換えるでしょう。なので、バッテリーの交換費用は、維持費として考えなくても良いと思います。
電気自動車のバッテリーを長持ちさせる方法
上記の保証期間から推測すると、電気自動車のバッテリー耐用年数は10年くらいだと考えられます。かなりの長寿命だといえますが、快適に走行し続けるためには劣化を抑えるように日頃から意識しないといけません。
バッテリーの劣化を防ぐには、以下のような対策が有効だとされています。
- 日陰で涼しいところで充電する
- 満充電のままで放置しない
- 基本的には80~90%の充電までにする
- 容量が10%以下の時には急加速しない
リチウムイオン電池は熱に弱いですから、炎天下の中で長く放置すると劣化の原因となってしまいます。なので、夏場に充電する際には、日陰を選んで行うようにしましょう。
あとは、満充電の状態で放置することも良くないので、充電する際には8割程度に抑えることが望ましいですね。
こういったことを心がけるだけで、バッテリーの劣化を防いで長持ちさせることができます。
電気自動車は安全に配慮されている
電気自動車には、リチウムイオンバッテリーを搭載しているので、安全性に不安を感じている人もいるかもしれません。サムスンのスマートフォン「Galaxy Note 7」で、バッテリーの爆発事故が多発したことは社会問題にもなりました。
自動車にはもっと大きなバッテリーを積んでいるので、もし爆発したとしたら大惨事になるでしょう。
そういった危険に備えて、メーカーでは安全対策を行っています。
まず、ボディ構造を最適化することで、衝突時にバッテリーへのダメージを抑えられるようにしています。さらに、事故が起きた時に電圧を遮断する仕組みとなっていて、感電を防ぐ構造になっているわけです。
他にも、寒冷地や冠水路、段差での走行テストや高圧洗浄テストなども行っており、どんな状況下でもバッテリーに異常がないことが実証されています。
かなり安全に配慮されていますから、安心して乗ることができるでしょう。
電気自動車による火災事故について
2016年11月に、電気自動車を充電中に火災が発生したという事件がありました。車種はアウトランダーPHEVなので、正確にはプラグインハイブリッドですね。
自宅の充電ケーブルがショートして、そこから火花が出たようです。日本で初めての充電事故なので、ニュースでも話題になりました。
ただ、充電設備の構造として、ショートして想定外の電流が流れた場合、すぐにシャットダウンされる仕組みになっています。なので、原理的には、火災は発生しないはずです。
もしかすると外部からの出火かもしれませんし、詳しい調査結果が出るまで何とも言えませんね。
ちなみに、アメリカでは、電気自動車による火災事故はたびたび起きています。テスラモーターズの「Model S」は何度も出火していて、車体が物体に乗り上げた際にバッテリーが損傷したことが原因のようです。
日本車では走行中の火災はありませんので、比較的安全性は高いといえます。
電気自動車が普及するための課題とは?
電気自動車の販売数は伸びていますが、それでもまだマイナーな自動車です。普及するまでには、色々な課題が残されています。それらを克服していけば、確実に普及はしていくはずです。
現時点の課題としては、次のようなものがありますね。
バッテリーのコストが高い
以前よりもバッテリーは値下がりしていますが、それでもまだ高いといえます。バッテリー価格が高すぎるせいで、それが車体価格を押し上げてしまっているわけです。
たとえば、日産のリーフだと、補助金を使っても新車価格で300万円ほどとなります。同クラスのガソリン車であるノートは170万円くらいなので、100万円以上の価格差ですね。
燃料代や消耗品代はかなり安いですが、それでも価格差を埋めるのは難しいでしょう。コストパフォーマンスで考えると、まだまだ電気自動車は割高と言わざるを得ません。
これからリチウムイオンバッテリーの価格が下がっていけば、もっと安く電気自動車を購入できるようになるでしょう。そのため、各メーカーは、電機メーカーと協力してコストカットの努力をしています。
トヨタはパナソニックと組んで、「プライムアースEVエナジー」という会社を立ち上げました。ここでは、ハイブリッドカーや電気自動車に搭載するための、バッテリーの開発や製造を行っています。
日産はNECと合同で「オートモーティブエナジーサプライ」という会社を作っていますし、三菱はバッテリーメーカーのユアサと協力して研究開発をしているようです。
これから研究が進んでいけば、もっと安くて高品質なバッテリーが開発されていくと思います。
充電スポットが少ない
電気自動車のネックとなるのが、充電スポットについですね。自宅に充電設備を設置できれば、毎日手軽に充電できるのでものすごく便利です。電気代の安い夜間だと、寝ている間に充電を済ませることができます。
でも、アパートやマンション暮らしの場合だと、かなり難しいでしょう。充電スタンドを完備している集合住宅も出てきましたが、まだまだ一般的ではなく供給が追い付いていないのが現状です。
自宅で充電できない人は、外部の充電スポットを利用しなくてはいけません。メーカーが提供する月額サービスに加入すれば、無料で充電することができます。
たとえば、日産のサービスだと、月額3,000円で全国5,000か所以上の充電スポットで充電し放題になります。かなりお得だと思うかもしれませんが、月額3,000円もあればガソリン車だと500kmほど走れる計算です。
月に500km未満しか走らない人は、それだけで損になってしまうわけです。
現時点では、自宅で充電しないとメリットが少ないので、今後は充電スポットの拡充と値下げが重要になります。
充電に時間がかかる
ガソリンだと数分で満タンにできるのに対し、電気だと満充電までに8~11時間もかかってしまいます。夜間に充電しておけば寝ている間に終わりますが、それを忘れてしまうと朝出かける時に電池が無いといったことになるでしょう。
また、充電スポットの数は増え続けていますが、それでもガソリンスタンドの数には遠く及びません。なので、電気自動車で旅行などへ出かける場合、充電スポットが見つからずに燃料切れになることがあります。
運良く充電スポットが見つかったとしても、順番待ちの行列ができていることが多いです。急速充電でも80%充電までに20~30分ほどかかるので、複数人が並んでいると数時間かかることもありますね。
なので、充電時間を短縮することも、重要な課題だといえます。
航続距離が短い
電気自動車の航続距離は、車種にもよりますが100~300kmくらいです。また、バッテリーは年々劣化していきますから、満充電で走行できる距離は短くなっていきます。
ガソリン車と比べると半分くらいしか走れませんし、充電スポットの数も少ないので遠出をするときには不便さを感じることが多いでしょう。山奥へキャンプなどへ行くと、電池切れで帰れなくなることも考えられます。
バッテリー容量が増えれば航続距離も伸びますが、それだけ車体価格も高くなるため難しいです。もっと技術が発展すれば改善されますが、現状は近場の移動に絞った使い方しかできません。
以上、電気自動車のメリットや課題などについて解説をしました。
環境にやさしい次世代の自動車ですが、完全に普及するまでには時間が掛かりそうです。ただ、今後は確実に伸びてくるはずなので、今のうちから購入を検討することもありだと思います。