自賠責保険の仮渡金制度とは?示談前でも治療費を前借りできる!
ツイート自賠責保険には、仮渡金制度というものがあります。これは、示談の途中で損害賠償が成立していない段階でも、被害者が一時金を請求できる権利のことです。「自動車損害賠償保障法第17条1項」に、定められているものですね。
保険会社から保険金が支払われるまでには、一定の時間が掛かってしまいます。しかし、事故の被害者はすぐに治療をしなくてはいけません。そのための費用が無い人は、仮渡金制度で保険金を前借りすることができます。
ここでは、仮渡金制度について解説をするので、参考にしてみてください。
保険金の支払いは時間が掛かる
交通事故の被害者が保険金を請求する方法は、以下の2つがあります。
任意一括請求(加害者請求) | 損害賠償額の確定後、保険会社から支払われる。 |
---|---|
被害者請求 | 被害者から相手の自賠責保険会社に請求する |
任意一括請求では、損害賠償額が確定しなければ、支払われることはありません。そして、被害者請求であっても、損害保険料率算出機構の調査終了後でないと、保険金が支払われないわけです。
普段から貯金をしていない人は、急な事故に遭ってしまうと治療費を捻出するのが難しいですよね。そのため、お金に余裕のない人は、困ってしまうことになります。
すぐにお金が必要なら仮渡金制度を使う
自賠責保険は被害者保護を目的としているので、上のようなデメリットの解消のために「仮渡金制度」が設けられました。
仮渡金制度とは、損害賠償額の確定前でも一定額の保険金を受け取ることができる制度のことです。請求から1週間程度で受け取ることができるので、急いでいる人でも安心できるでしょう。
受け取った金額は、本請求時に差し引かれて保険金が支払われることになります。
仮渡金のメリットとしては、以下の通りです。
- 示談が成立していなくてもOK
- 請求から1週間程度で受け取ることができる
- 加害者の承諾が必要ない
加害者が責任を認めないことで、示談が長引くというケースはよくあります。そういった時にでも、仮渡金を受け取ることができるわけです。
仮渡金制度の注意点
仮渡金を受け取れるのは、1回きりとなっています。なので、後で足りなくなった時には、本請求まで待たなくてはいけません。示談で揉めて裁判などになったりすると、それだけ時間が掛かるので注意してください。
そして、仮渡金で余った分に関しては、保険会社に返還しなくてはいけません。あくまでも必要な経費として受け取るわけですから、余分にもらおうとは思わないようにしましょう。
その後の調査で加害者側の責任が無いと判明した場合にも、受け取った金額のすべてを返還する義務が生じます。
また、仮渡金の請求には、期限があります。以下の日から3年以内に請求しなければ、権利が消失してしまうので忘れないでくださいね。
傷害の場合 | 事故があった日 |
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後遺障害の場合 | 後遺障害の症状が固定した日 |
死亡の場合 | 死亡した日 |
仮渡金の金額と手続きについて
仮渡金で受け取れる金額は、症状によって決まっています。
死亡 | 290万円(1人につき) | |
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傷害 | 脊椎の損傷が認められる | 40万円(1人につき) |
上腕又は前腕骨折による合併症を有する | ||
大腿又は下腿の骨折 | ||
内臓破裂で腹膜炎を起こしている | ||
14日以上の入院かつ、30日以上の治療が必要 | ||
脊柱の骨折 | 20万円(1人につき) | |
上腕又は前腕の骨折 | ||
内臓破裂 | ||
入院をして30日以上の医師の治療が必要 | ||
14日以上の入院が必要 | ||
11日以上の医師の治療を要する | 5万円(1人につき) |
また、申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 仮渡金支払請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 医師の診断書
- 被害者本人の印鑑証明
- 委任状および委任者の印鑑証明
- 戸籍謄本(死亡事故の場合のみ)
廃止された内払金制度
仮渡金とよく似た制度で、内払金制度というのがありました。これは、示談の成立前であっても、10万円単位ごとに保険金を請求できるという内容です。傷害の限度額である120万円までは、何回でも請求できるために非常に便利でした。
ただ、自賠法で規定されたものではなく、保険会社の中で暗黙のルールとして行われていた制度でした。しかし、平成20年に廃止されたので、今では使うことができません。
任意保険では「仮払い金」の請求ができますから、相手が任意保険に加入している場合には問い合わせてみましょう。