交通事故における条件付無過失責任とは?
ツイート交通事故に遭った時には、加害者と被害者の双方に過失が認められるのが一般的です。たいていの場合は、双方に落ち度がありますから、自分の過失分を差し引いて賠償責任が生じます。
これを「過失相殺」と言いますね。過失相殺の概念は自動車保険において重要ですから、必ず覚えておくようにしましょう。この考え方は、「条件付無過失責任」という概念からきています。
条件付無過失責任とは、事故の加害者であっても免責になる条件が定められているものです。自分の過失で事故を起こしてしまった時に備えて、知っておくようにしてください。
無過失責任とは何か?
過去の刑法においては、故意または過失によって他人の利益を損害した場合、損害を賠償する責任を負うと規定されていました。「故意または過失によって」というのがポイントで、加害者に過失が無ければ責任はないと定められていたわけです。
これを「過失責任」と呼びます。つまり、事件や事故の被害者になってしまうと、加害者の故意・過失を立証しなければ、賠償請求ができないということですね。
民法においても、過失責任が定められています。
【民法第709条】
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
しかし、その後の科学技術の進歩や交通機関の発達などによって、公害や事故などでの被害者が爆発的に増えるようになりました。すると、加害者の故意・過失を立証するのが難しいケースが多くなってきたわけです。
そのため、加害者に故意や過失が無くても、賠償の責任が生じる「無過失責任」という考え方が誕生しました。企業の公害問題や売買契約などの一部では、無過失責任が認められています。
自動車の損害賠償では、「条件付無過失責任」が定められている
自動車事故においては、条件付きの無過失責任という特殊な規定が定められています。
【自動車損害賠償責任 第三条】
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
少し難しい文章が出てきましたね。簡単に言ってしまえば、運転者に過失が無ければ賠償の責任はないということです。これだと、過失責任と同じだと思いがちですが、過失責任よりも細かいルールが決められています。
具体的には、3つの条件が定められていて、それらを満たしている場合にのみ賠償責任が免除されるということですね。それが、以下の3つとなります。
- 十分に注意して運転していたこと
- 「被害者」または、「運転者以外の第三者」に故意・過失があったこと
- 自動車に性能の欠陥が無かったこと
十分に注意して運転していたこと
運転者に過失が無いことを証明するためには、交通ルールを順守している必要があります。法定速度や一旦停止、前後左右の確認など、運転に問題がないかどうかが重要となりますね。
「被害者」または、「運転者以外の第三者」に故意・過失があったこと
被害者が赤信号を無視していたり、他の車に煽られたりなど、運転者以外に故意や過失が認められれば、運転者の賠償責任は無くなります。特に、被害者の信号無視においては、裁判では高い確率で認められるようです。
自動車に性能の欠陥が無かったこと
日常の安全点検や車検を受けていることは必須です。自動車に何らかの欠陥が見つかった場合には、整備不良としての罰則を受けることになるでしょう。無車検などは絶対にダメですから、車の整備は欠かしてはいけません。
以上の3つの条件をすべて満たしていれば、事故の加害者であっても情状酌量の余地が認められるはずです。
無過失を証明するには現場の保全が必須である!
交通事故が起きた時にはパニックになると思いますが、冷静になって状況を整理しなくてはいけません。特に、多くの証拠を残しておかないと、示談交渉の際に話がこじれてしまう可能性が高いです。
なので、事故が起きた時の状況を正確に伝えるために、現場の保全を行ってください。
たとえば、目撃者に証言してもらうことや、現場の写真を撮るといったことが大切ですね。できることなら、ドライブレコーダーを設置しておくのが望ましいでしょう。
あとは、被害者の救護も忘れてはいけません。怪我人がいたのであれば、すぐに救急車を呼ぶようにしてください。こういった対応をしないと、「救護義務違反」に問われる可能性があります。
警察による実況見分で正しい情報を伝えれば、自分が無過失であることを証明できるでしょう。
ただし、自分の立場を有利にするために、嘘をつくのは止めてくださいね。被害者の証言と食い違いが出ると、自分の嘘は簡単にバレてしまいます。